のデザイン

松浦健治郎（千葉大学工学研究院建築学コース准教授）

　「まちいす」のデザインは2022年度の都市デザインスタジオ「大学とまちが一体となったアーバンストリートのデザイン〜千葉市西千葉学園通り」で羽田知樹君から出されたアイデアが出発点になっている。羽田君は街路樹帯の柵を活用した「まちいす」を提案して、実際に製作し、子供達に座ってもらったりしていた。この提案は途中で消えてしまい、最終講評会の提案にはなかったのだが、提案冊子を取りまとめる際に残すべきだと判断したという経緯がある。都市デザインスタジオのゲスト講師に来て頂いたDropsの小笠原さんから「できそうなプロジェクトを一緒に実現しましょう」と声を掛けて頂き、2023年度から２週間に一度、小笠原さん、千葉市の田中さん・後藤さん、松浦研の修士１年５名と松浦で打ち合わせをしながらいくつかのプロジェクトの企画を進めたうちのひとつが「まちいす」である。ここでは「まちいす」の形態とロゴデザインの２つに分けてデザインプロセスを紹介したい。

１．「まちいす」の形態について

　「まちいす」の形態は羽田君のデザインを踏襲しながら、松浦がラフスケッチを描き、M1の土井さんに詳細を検討してもらった。

　四角の「まちいす」については、羽田君の初期案を基に座面や支柱の形状を検討していった。座面については人が座れる最小限の大きさである幅400mm・奥行250mmとし、支柱については歩道を歩く人が蹴ることがないように座面の奥にV字型に設置することとした。コンクリートの基礎については、ペットボトルにモルタルを流し込んで自作する案もあったが、品質の標準化のため、既製品の羽子板束石を使用することとした。

　三角の「まちいす」については、2023年５月23日の打ち合わせ時に「三角のコーナー部分は支柱を付けずに固定できるのではないですか？」というご意見をいただき、2023年５月24日に三角の「まちいす」のラフスケッチを描いて、土井さんに詳細を検討してもらった。三角形の形態は三角コーナーの角度である90度は必須として、２辺の長さは材料に応じて柔軟に変更する方向に落ち着いた。仮設置の際に結束バンドが見えてしまうという問題があったため、化粧の板を上に載せることで対応することとした。

2022年度都市デザインスタジオ「大学とまちが一体となったアーバンストリートのデザイン〜千葉市西千葉学園通り」で提案された「まちいす」

四角のまちいすの原形　

2023.5.9イメージスケッチ（松浦）

2023.5.15イメージスケッチ（土井）

2023.5.22イメージスケッチ（土井・中村）

三角のまちいすの原形

2023.5.24イメージスケッチ（松浦）

座面の大きさの検討

2023.5.29（土井）

材料の検討

2023.5.29（土井）

三角のまちいすを仮設置

→結束バンドが見えてしまう問題が発生

化粧の板を上に載せることで対応

2023.6.6（土井・中村）

四角のまちいすを仮設置

→結束バンドでは安定しないため脚が必要

2023.6.6（土井・中村）

四角のまちいすの脚の素材検討2023.6.28（土井）

鉄パイプを用いた案

四角のまちいすの脚の検討→軽快感を出すためにくり抜き有りに決定

2023.6.29（土井・中村）

座面の土台からのはみ出し寸法の検討

2023.6.29（土井）

三角の「まちいす」

四角の「まちいす」

２．ロゴデザインについて

　ロゴデザインについては中村さんに担当してもらうこととした。様々な案を検討した結果、座面奥に地名の緑町に因んだ緑色の帯にロゴを刻印することになった。緑色についてはまちの多様性を表現するために子どもを対象としたワークショップで子供達に自由に色を配合してもらい、いす毎に異なる色を用意することとした。ロゴのデザインについては１０種類ほど検討した結果、Dropsの長谷川さん（当時、千葉大学工学部デザインコース４年生）の案が採用された。また、「ご自由にお座りください」については外国人に配慮して英語も併記しようということになり、名誉教授のマーティン・モリス先生にご相談した結果、「Feel free to sit down」に決まった。